『モンテ・クリスト伯』⑥ アレクサンドル・デュマ

基本情報

作者  アレクサンドル・デュマ 訳 山内義雄

出版  岩波書店 

出版年 1956年

スポンサーリンク

目次

八一 パン屋の隠居の部屋
八二 押しこみ
八三 神の手
八四 ポーシャン
八五 旅
八六 審判
八七 挑戦
八八 侮辱
八九 夜
九〇 決闘
九一 母と子
九二 自殺
九三 ヴァランティーヌ
九四 告白
九五 父と娘
九六 婚姻契約書
九七 ベルギー街道
九八 鐘と罎の旅館

あらすじ

アンドレア(ベネドット)をゆすり続けるカドルッスは、アンドレアに殺される。アルベールに決闘を申し込まれたボーシャンは調査の結果、アルベールの父が裏切り者であることを知る。しかし友情故にそれを二人の秘密にした。だが、次の報道ではっきりとフェルナンが裏切り者で現在伯爵を名乗っていることが明らかにされる。モルセール伯爵事フェルナンは議会においてかかる報道がでたらめであることを主張するが、その時、証人としてエデが入ってきた。エデの真実の叫びがフェルナンの嘘を明らかにした。アルベールは、モンテクリスト伯がすべて仕組んだことに気付き、決闘を申し込む。アルベールが確実に死ぬであろう決闘の数時間前、メルセデスはモンテクリスト伯に呼びかけた「エドモンさん」と。エドモンダンテスは、アルベールを殺さず自らが殺される道を選んだ。だが、メルセデスに真実を告げられたアルベールは、父を捨て母と二人で旅立った。怒り狂ったフェルナンはモンテクリスト伯を殺そうとするが、エドモンダンテスであることを知り、自殺する。
一方、ヴィルフォール家では毒でヴァランティーヌが死の間際まで行き、アンドレアの正体がばれアンドレアは逮捕される。

主な登場人物

  • モンテクリスト伯‥‥ブゾーニ司祭でありウィルモア卿。
  • ダングラール‥‥段々損が大きくなってくる。
  • メルセデス‥‥モンテクリスト伯と悲しい会話をする。
  • フェルナン‥‥裏切りの事実が新聞報道される。
  • アルベール‥‥父の名誉を汚されたと決闘を申しこむ。
  • フランツ‥‥ヴァランティーヌの許嫁だったが、父を殺した犯人を知り破談。
  • マクシミリヤン‥‥ヴァランティーヌと結ばれず死を選びそうになるが。
  • ドブレー‥‥大臣秘書官。ダングラール夫人と不倫。
  • ボーシャン‥‥新聞記者。フェルナンの裏切りを知るが友情故に隠す。
  • ルノー‥‥アルベールの友達。マクシミリヤンを紹介する。
  • モルセール夫人‥‥メルセデス。正体に最初から気付いていた。
  • ベルツッチオ‥‥使用人。過去にヴィルフォールを刺す。
  • ヴィルフォール‥‥検事総長。次々と周囲の人間が毒殺される。
  • ベネデット‥‥アンドレア。昔のことをネタにゆすってくるカドルッスを殺害。
  • エデ‥‥ギリシャの王の娘。フランツに復讐を果たす。
  • ヴァランティーヌ‥‥ヴィルフォールの娘。毒で死にかける。
  • エドゥワール‥‥ヴィルフォールの子、ヴァランティーヌの母違いの弟。
  • ユージェニー‥‥ダングラールの娘。アルベールの許嫁。父を捨て旅に出る。
  • ノワルティエ‥‥ヴィルフォールの父、ヴァランティーヌを愛する。ヴァランティーヌを救おうとする。

印象的な場面

「(神は)お前に、健康と、力と、確実な仕事と、友だちと、それにまた、人間が、落ち着いた心と、素直な願望の満足とをもってやすらかに生きていけるような生活をお与えになった。ところがお前は、神様からめったに与えていただけないようなそうしたありがたいおめぐみを生かすかわりに、いったいなにをやってのけた?お前は、怠け、酒に酔っ払い、そして、酔っぱらったあげく、お前の友達のなかでの、いちばんいいおとこを裏切ったのだ」(p72)

精神上の傷は、人目にこそふれないが、決して癒着することのないことをもって特色としている。それはいつも苦痛をうったえるものであり、人の手が触れればすぐに血を流し、心の中でいつもなまなましく、いつも口をあけているものなのだ」(p121)

「わかっておいでの敵は、たいして恐ろしい敵ではないんです」(p158)

感想

アルベールとの決闘が決まり、アルベールがほぼ確実に死ぬことが明らかとなった直後、メルセデスがモンテクリスト伯に「エドモンさん」といった時のダンテスの衝撃。その後の二人の仮面を取り払った会話。メルセデスは声を聞いただけでモンテクリスト伯の正体を知っていた。息子を守りたいという母の思いが、またダンテスのことを今でも思い続けているというメルセデスの思いが、ダンテスが強靭な意志ですすめていた復讐への思いを揺るがせた。クライマックス。ここは心が揺さぶられますね。憎悪の炎を慈愛の水が癒したというべきか。しかし、ダンテスはこの時、アルベールを決闘で殺すことをやめるという即ち自らが殺されるということを決断したわけで、根がどうしても優しいのだろう。強さに基づく優しさ。