『モンテ・クリスト伯』⑦(完) アレクサンドル・デュマ

基本情報

作者  アレクサンドル・デュマ 訳 山内義雄

出版  岩波書店 

出版年 1957年

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目次

九九  法律
一〇〇 幽霊
一〇一 ロクスタ
一〇二 ヴァランティーヌ
一〇三 マクシミリヤン
一〇四 ダングラールの書名
一〇五 ペール・ラシェーズの墓地
一〇六 分配
一〇七 獅子窟
一〇八 裁判官
一〇九 重罪裁判
一一〇 起訴状
一一一 贖罪
一一二 出発
一一三 過去
一一四 ペピーノ
一一五 ルイジ・ヴァンパの献立
一一六 ゆるし
一一七 10月5日

あらすじ

ダンテスの復讐は次々と実現していった。ヴィルフォールは、妻と子と名誉と地位をすべて失い狂人となった。だが、計画にない子どもまで死んでしまったことがダンテスに大きな疑問をもたらす。ダンテスは、破滅に追いやって逃亡したダングラールの命をとることはやめた。そして恩人の息子とその愛すべき人に全ての財産を譲り、いまやダンテスの希望となったエデと共に旅立った。「待て、しかして希望せよ」との言葉を残して。

主な登場人物

  • モンテクリスト伯‥‥エドモン・ダンテス。
  • ダングラール‥‥破滅し500万フランをもって逃亡するが、山賊に捕まり一文なしに。
  • メルセデス‥‥息子がアフリカに兵士としていき、悲しみに沈む。
  • アルベール‥‥母のためお金を稼ぐためアフリカに兵士としてむかう。
  • マクシミリヤン‥‥ヴァランティーヌの葬式が終わり、自殺を図ろうとする。だが
  • ドブレー‥‥不倫相手であったダングラール夫人が没落すると切り捨てる。
  • メルセデス‥‥独りとなり、エドモンとつぶやきながら別れを告げる。
  • ヴィルフォール‥‥すべてを失い狂人となる。
  • ベネデット‥‥アンドレア。自らの裁判で父がヴィルフォールであることを表明。
  • エデ‥‥ギリシャの王の娘。ダンテスを愛し、旅立つ。
  • ヴァランティーヌ‥‥ダンテスによって仮死状態とされたのち救われる。マクシミリヤンと結ばれる。
  • エドゥワール‥‥ヴィルフォールの子。母との心中により死亡。
  • ノワルティエ‥‥一番死にそうで最後まで生きていた。

印象的な場面

(私の心の中にも)いつもいっしょにいてくれる人が二人います。その一人は、わたしを生んでくれた人。ほかの一人は、わたしに智慧を与えてくれた人。その二人の精神が、いつも私の中に生きています。なにか思い迷うとき、わたしはその二人に相談します」(p299)

「何から何までヴェールをとおして見るということ、それは心の弱い人たちにありがちでしてね、つまり、そうした心自身、自分の限界をつけてしまうというわけなのです」(p299)

「雄々しく不幸に立ち向かわれたことによって、りっぱな強いお方におなりなのです。こうして、不幸は転じて幸運となります」(p306)

「きわめて大きな不幸を経験した者のみ、きわめて大きな幸福を感じることができるのです」(p439)

人間の智慧はすべて次の言葉に尽きることをお忘れにならずに。「待て、しかして希望せよ」(p439)

感想

何もしない「神」に成り代わり、復讐を果たしていく中で、ダンテスは大いなる疑問、自らの行動の正しさについて、がわきあがる。想定外の子どもまでが死んでしまったために。彼は胸中の師と対話するため、かつて自らを14年間閉じ込め、今は革命により解放されている牢獄へ向かう。人間は弱く、感情のままに生きてもいいことはあまりない。朝眠たい、もう少し布団の中にいたいという感情のままに生きれば、会社を首になる。単なる理性ではなく、心の中に指標となるべき人がいれば、人は大きく道は踏み外さないのではないかと思った。

ダンテスは師であるファリア司祭から、莫大な財産とあらゆる知識と知恵を授かった。ダンテスによる報恩も復讐も、莫大な財産があったからこそ成しえたのはいうまでもない。だが、彼自身の持って生まれそして14年間もの牢獄暮らしで鍛えられた人格、そして智慧がなければたとえ財産があったとしてもうまくはいかなかっただろう。そしてなにより、エデとの旅立ちで迎える幸せはありえなかっただろう。ダンテスには、莫大な財産により豪華な宝石・馬・オペラ・山海の珍味を集めた豪華な食事、このどれ一つも喜びをもたらさかった。

ダンテス、作者の思想は、どんな絶望的状況であっても、待つことと希望を忘れなければ必ず乗り越えられるというものであった。