『三国志』2 宮城谷昌光

基本情報

作者  宮城谷昌光

出版  2008年

出版社 文藝春秋

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目次

  • 急逝
  • 虎狼
  • 酣歌
  • 曹騰
  • 五侯
  • 争臣
  • 李膺
  • 竇武
  • 党錮
  • 黄龍
  • 霊帝
  • 黄巾

ざっくり内容

10代皇帝質帝から12代霊帝までの間。肥大した外戚を打ち倒すため皇帝が宦官を利用し、そうすると宦官が肥大化しいずれにせよ王朝をむしばむ。すると各地で反乱が勃発し、外敵も侵攻してくる。愚かな皇帝は賢人の意見を用いず、佞人の讒言ばかり用いる。世は乱れ、黄巾が大いなる勢力で勃興する。名将皇甫嵩・朱儁、それに若き曹操・孫堅が討伐で活躍する。

印象的な場面

世のふしぎのひとつに、権力が増大するほど人の声が聴こえなくなるということがある。ゆえに権力者は人の数倍の努力をして人の声を聴かなければ、正常な規矩を失って、幻想や妄想の尺度をもって未来をはかるようになる。(p69)

「組織は賞罰の不公平さから崩れてゆくのである。罰するより賞するほうがむずかしい」(p162)

人というのは奇妙なもので、戦う相手がいないということが最大の敵となった(p179)

兵の心を掌握したうえに用兵というものがあり、用兵を先行させた将がことごとく失敗している(p184)

「玄徳」という劉備のあざなはおもしろい。『老子』のなかに、―生じて有せず、為して恃まず、長じて宰せず、是れを玄徳と謂う。と、ある。産み出しても所有せず、成功しても誇らず、そこで最高になっても支配するようなことをしない。それを玄徳というのである。劉備の生涯をみると、その一文の玄理に適っているような気がしてならない。(p187~8)

王朝の美質と欠点は創業者の全象によって定まる。(p196)

感想

2巻後半でやっと、曹操・孫堅・董卓、ついでに韓遂がそして黄巾賊がでてくる。韓遂は梟雄イメージがなかったので新鮮。宮城谷版三国志ではずっと流れが描かれているから、皇甫嵩が誰の血を引いていてそいつがなにをしたかなどがわかるのは、やはり他の三国志にはないところ。

それにしてもよく人が死ぬ。狂人の権力者が殺しまくるし、死をもって諫める賢人もいるし、賊と戦えばすごい数の首をあげるし。この当時の中国の人口が記録上5000万人を超える。これが三国時代で約800万人にまで減少するから恐ろしい。

皇帝が血筋だけで選ばれる権力者は、まともな皇帝のほうが例外で、たいていは世間知らずの暗愚で自らの享楽にふける人間のほうが多いのではないだろうか。これは権力そのものにやどる魔性でシステムによる制御は限界がある気がする。名君は例外的で、権力周辺の人間からしてもトップは愚かで言いなりのほうが自己の利益を図るのに都合がいいし。「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」と誰かも言ってたな。

作中の曹操が言っているが、「賊」とはいうものの、それは王朝の腐敗によって搾取され虐げられてきた民衆がやむにやまれぬ思いで起こしているものであって、政治が腐っていなければ、彼らは蜂起していないのだろうと思う。権力欲的な例外や、その民衆の動きを利用しようとする人間はいたとしても。根本の原因をただすことなく、表面に表れたものだけをもって、力で押さえつけることで国も疲弊し、民衆の心は離れ、政治の安定もかえって欠いていくという。

それにしても嘘で人が貶められることがあまりに多い。限られた人間関係の中において別人が一斉に特定人の悪口を言うと信じてしまいがちなのだろう。讒言はいつの時代もある。