【小説】『言葉屋3 名前泥棒と論理魔法』久米絵美里

基本情報

作者  久米絵美里 絵 もとやままさこ

出版  2016年

出版社 朝日学生新聞社

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内容

第一章 名前泥棒の季節→仲良しだったしぃちゃんと中学進学でクラスが別々に。太陽だと思っていたしぃちゃんが孤立しており、詠子は‥‥

第二章 転校生は言葉ハンター→カンボジアから転向してきた喜多方語。彼は詠子に大嫌いという。

第三章 マジカルロジカルクラブ→詠子はクラブに入っていなかった。そんなとき、タロット占いをする先輩に声をかけられた。

第四章 波とかしの祈り→おばあちゃんの友達の孫がオーストラリア留学で悩んでいた。おばあちゃんは言珠をつくろうとするが‥‥

第五章 宇宙人からの絵葉書→詠子の親は離婚していた。父親のことを「あの人」という詠子にはいつもあの人から絵葉書が届いていた。

感想

シリーズものであるようだが、いきなり3番目から読んだ。しかし問題なく読めた。
全体的に美しいお話。その中でも第一章が一番良かった。リアリティがあるのと、詠子の優しさ、しぃちゃんのちょっとめんどくさいところなど。言葉屋というのが本書のオリジナルなところであるが、その辺りも問題なく読めた。
少し引っかかったのが、設定の説明を作中の登場人物にさせることがちょくちょくあるが、それが冗長に感じた。おばあちゃんは言葉屋の江戸時代のお話、タロット同好会の宮尾はタロットについて話すのだが、中学生とおばあちゃんはほとんど同じくらいの説明能力。
あと、最後に父親に無言の絵手紙を出すところで本書は終わる。第四章からの「コミュニケーションは言葉だけではない」、という流れで「言葉以外の強さも知らなくてはならない」、「言葉のトラブルを言葉だけで解決しなくてもいい」ことを理由に、詠子は父親と同様何も言葉のない絵葉書を父親に初めて送っている。これはこれでいいとは思う。
ただ、せっかく中学入学で英語を学びだしたことを第一章での事件のきっかけでもあげていたことと、父親は言葉でずっとコミュニケーションをとろうとしていたこと、それに詠子は修行が短いと喜多方から言われたことからしたら、言葉の力の限界を知ったうえで、ここは拙くても言葉でいいたいことを言わせるべきではなかったのだろうかと思う。詠子の優しさならそれができたと思う。